アプローチ理由と意味

そもそもピアノは、何の意味があって開発/出現した楽器なのか…ですが、音楽学に少し踏み込みます。キリスト教の宗派…

a) カトリックは「全体主義の自由と平等」を唱えます。〈無闇な強弱を付けたらいけない… それは祈りだから… 〉という戒律があり、パイプオルガンや、弦張力の弱い弦楽器、強弱に薄い撥弦楽器… ハープシコード/クラヴサン/チェンバロ等が流行しました。

b) 1500 ~ 1600年代に宗教改革があって、プロテスタントは「個人主義の自由と平等」を唱えます。その頃になると、元々葬儀や戦争の合図に使われていた金管楽器も、パイプオルガンやオーケストラにも登場するようになり、オペラで馴染みの… ベルカント唱法の発声法等も発展しました。やがて、チェンバロの改良型で、強弱を産み出すことが可能な打弦楽器… 「ピアノフォルテ付きチェンバロ」… 後に単純にピアノと呼ばれる楽器が 1700年代初めに出現し、〈強弱が出来ることを自由〉と捉え、流行しました。また、ロマン派… ショパン等が生きた時代以降には、速度記号が
アンダンテ (Andante)... 歩くようなテンポで
アレグロ (Allegro)... 馬車が走るようなテンポで
プレスト (Presto)... 機械(汽車)が走るようなテンポで
等の表記から、1分間に何の音符が何回入るのか… で表記されたり、練習曲 (エチュード) も出現し、自由表現の一つとして、よりスムーズに、より連打性を高められるピアノの構造やピアノの調整が追究されるようになりました。

短く纏めて、このような経緯に哲学と呼ばれる位置づけのピアノという楽器ですが、アップライトピアノとしても、より哲学的な条件を満たすことを想像すれば、お求め頂いたお客様のピアノが、ヨーロッパに於ける… ルネサンス 〜 中世後期 〜 近世 〜 近代… そのような歴史を身近に感じたり、歴史的な意味に内在させる調整は、バニラエッセンスを一滴(ひとしずく)加えたように、ひと味もふた味も変わって、楽しめる楽器になるのではないかと考えています。