アプローチ
あなたのアップライトピアノ… グランドピアノに比べて、演奏上で出来る内容が余りないと諦めていませんか? そんなイメージを払拭し、今迄と違うイメージで、あなたのアップライトピアノを…
a) 調律
〜より平均化された内容の12平均律の分割方法〜
アメリカのピアノテクニシャンギルドやフランス等の文献から、それらを組み合わせた12平均律の分割方法を採用し、3度・4度・5度・6度共に平均化。耳に周波的な音程が残り易い 3度・6度と 5度の 2次倍音の流れを、より緩やかな 3度や 6度の配列と、より和音の質の均等感が感じられるように研究しました。日本の調律に関する文献も少なく、3度の流れを盛り込もうとすると、4度や 5度を蔑ろに多めに作る音程と少なめに作る音程で、3度の流れを見た目良くした分配状況はよく見かけます。それはザックリ大きく失敗することを避けた見映え、全体としての不揃いは拭い切れません。また、3度・6度と 5度の 2次倍音の配列に判り易い差を作ってしまうと、オクターブを作る時の展開和音に粗密が起こり、ハッキリするキツい和音とハッキリしない干渉する和音が生じてしまいます。それを平均化した平均律と言うには少々疑問を感じています。それはどちらかと言うと、不等分律の古典調律や中間音整律に近い、不揃いな同種音程の分割になってしまっていると考えています。唯でさえ個体差があり、ピアノ本体のまちまちなサイズや、太い弦から細い弦のゲージで本体に組み込んでいる工芸品としてのピアノは、12音の半音比… その方程式で割った理論上の音階には成らず、インハーモニーシティという誤差が発生することから、全体的な音程として、同種和音の質を少ない誤差に抑える出来映えにするためにも、中音域での平均律の纏め方は土台、重要な位置を示すと思います。土台としての12平均律の平均化分割から、全体の音域の仕上がりをお楽しみ頂けたらと思っています。
b) 整調
〜より究める連打性及び白鍵黒鍵共に全音域が同じ傾向の弾き心地になる調整方法〜
平均的な連打、グランドピアノ… 14~17回毎秒、アップライトピアノ… 7~9回毎秒と、アップライトピアノの連打機能が乏しく見られがちなことと、また白鍵より黒鍵の感触が重い等、白鍵 vs 黒鍵の弾き心地が大きく不揃いなことは… よく見かける状況ですが、どちらの改善も鍵盤を削るとかではなく、施されるべき整調の考え方と赴きで、その感触やスムーズさを大きく向上させることが可能です。
そして… もう一つ重要な位置を考えさせるのは、指に吸い付いてくるような鍵盤の弾き心地… 鍵盤の初動に支えがあり、その先に鍵盤がスッと降りてくる弾き心地は、強弱の幅や連打を、より確実な演奏曲目の仕上がりとして詰めていけるものと考えています。こうした物理的な観点も、パーツその物を削ったり改造する物では無く、短時間で調整可能… その研究に努めました。志として弾かれない調律に携わる人々には、皆無的で感じ取れない作業領域です。更に楽しく演奏出来ることを想像から実践… ご興味のある方には是非一度お試し頂ければと思っています。
c) 整音
〜コントラストを付け易い音質にする方法〜
先ずは… なるべく硬化剤という液体物を使用せず、ピッカーという針が突き出た工具で、明るさ・硬さ・伸び・太さ・強弱の最大幅 + ブルーミングを可能な限りハンマーフェルトに施します。
“blooming" …文字通り「花が咲く」ですが、ピアノでは pp で柔らかな音質、ff ・sfzになるに連れて、芯のある音になって弾ける(ハジける)音質を指します。日本の多くの調律に携わる人が避ける傾向の作業領域、特に blooming については、その言葉も浸透していない程の未開の作業領域です。併し blooming はアップライトピアノにも最大限に活かせます。何故避ける傾向にあるのかは、調律・整調は後戻り出来る作業工程ですが、整音はハンマーフェルトに針を刺すことが、フェルトの繊維を割いていく方向でしかなく、後戻り出来ない作業工程ということになります。なるべく少ない入針回数でハンマーフェルトに効果を出す智見と必需性があります。フェルトの繊維を必要以上に壊さないことが、お客様の大切な楽器を安全に取り扱うことに繋がると思います。
前述のそうした方法で、工芸品としてのあなたのアコースティックな楽器を仕上げてみませんか?
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